新春座談会

新春座談会画像

輝く人、つなぐ未来タイトル画像


 新型コロナウイルス感染症の影響で、新たな価値観が生まれ、ライフスタイルが多様化するなど、私たちを取り巻く環境が大きく変化しています。新たな時代のまちづくりに求められるものは何か―。

 今、長岡のまちの魅力を見つめ直し、さらに元気にしていこうと新しい発想で挑戦を続ける人たちがいます。その活動に込める想いや描く夢、そして長岡の未来を磯田市長と共にお話しいただきました。
【進行はFMながおかパーソナリティーの山田光枝さん】


山田(進行) 昨年は新型コロナウイルスの影響が色濃い一年でした。今日は、それぞれの分野で前を向いて挑戦を続けるみなさんと、長岡の未来を見据えた夢のあるお話をしていきたいと思います。

活動の源泉は人と想いを“つなぐ”こと

柴木 アルミニウム鋳物製造の会社を引き継ぎ、25年になります。長岡の子どもたちに幼い頃からものづくりに触れてもらいたいと「ものづくりフェア」の企画や、長岡産業活性化協会NAZEの活動を通じて産学連携の手助けをしています。

川上 摂田屋地区で473年続いている吉乃川の蔵元です。主に酒ミュージアム「醸蔵(じょうぐら)」の企画・運営や広報を担当しています。

片野 チェロの演奏家として長岡を拠点に県内外で演奏しています。学校での演奏指導や音楽に関わる執筆、イベントの企画なども行っています。

井上 私は生まれも育ちも東京です!大学4年生の時に川口地域の木沢集落に農村へのインターンで1カ月間お世話になりました(6ページ写真D)。それが縁で、現在は「にいがたイナカレッジ」で学生のU・Iターンやインターンシップの支援をしています。

長部 上条町でお米を作っている百姓です!父が始めた学校田を使って、地域の子どもたちへの食育活動をしています。農業の魅力をたくさん伝えたいと思っています。

市長 私は、まちづくりに不可欠なものとして、人を想う気持ちや夢を実現する強い意思を持つ人がどれだけいるか、つまり“人”こそが全てだと考えているんです。みなさんのような元気な方がたくさんいることが長岡のまちの強みだと思っています。

座談会の様子画像 ◆座談会の会場は、昨年9月に市民センター地下に移転オープンした「NaDeC(ナデック)BASE(ベース)」。学生と企業が交流・連携し、新たな発想やモノ、そして長岡のまちの未来を創り出す“挑戦”の場所です。当日は、感染症対策を行いながら開催しました


学校での農業体験画像
長部(おさべ) 茂幸 (しげゆき)さん
長部農場の跡取り。学校での食育活動やYouTube「オサベノウジョウTV」など、積極的に農業の魅力を発信。「世界えだまめ早食い選手権」の副実行委員長も務める
長部茂幸さん画像
“農業のありのまま”を伝えたい
田んぼのある長岡を後世に残す


たくさんの人と出会えることが大事
人もまちも、目指すはオンリーワン
片野大輔さん画像
直接学校に行って演奏を指導する出前講座画像
片野(かたの) 大輔 (だいすけ)さん
県内で活動するプロの音楽家集団・アンサンブル・オビリーの代表。長岡市音楽文化協会事務局長も務める。学校での出前講座や教材用DVDの制作などに関わる


川上麻衣さん画像 昔からある地域資源を活かしたい
“摂田屋で醸される酒”をつないでいく
川上(かわかみ) 麻衣(まい)さん
摂田屋地区で、創業470年以上の歴史がある吉乃川(株)の蔵元。令和元年10月にオープンした酒ミュージアム「醸蔵」などで摂田屋の歴史や文化、日本酒の魅力を精力的にPRする
醸蔵画像


ミュージックサフラン〜アフタヌーンコンサート〜画像 “摂田屋×音楽”で高まる魅力
 旧機那サフラン酒本舗「米蔵」で12月13日に「ミュージックサフラン〜アフタヌーンコンサート〜」が開催されました。片野さんが企画し、摂田屋地区出身の音楽家も参加。琴と尺八の美しい音色が会場に響き渡る、優雅なひとときとなりました。次回は3月25日(木)午後2時から。


長部 僕は常々、米百俵の精神のように教育こそが未来を変える唯一の方法だと信じているんです。学校での農業体験(写真@)で、これからの長岡を担う子どもたちに、精一杯、米作りに込める想いをつないでいきたいなと。

山田 みなさんは人や想いを「つなぐ」ことを特に大事にされていると感じます。川上さんはお酒で人の輪をつないでいますね。

川上 お酒って嗜好(しこう)品ですよね。だから誰と、どこで、どんな思いで飲んだかが大事だと思うんです。一昨年にオープンした「醸蔵」では、お酒はもちろん、摂田屋地区の歴史などを伝えています(写真B)。それは470年以上も摂田屋で蔵が続いてきた意義を、とても誇りに感じているからです。このまちの水や空気、文化もそう。ここでないと醸し出せないお酒があるんです。歴史をつなぐという役割もまた、大切な使命だと考えています。

市長 市では摂田屋地区の整備を進めています。昨年10月に情報発信・交流の拠点としてオープンした旧機那サフラン酒本舗の「米蔵(こめぐら)」。片野さんたち音楽家の方にも、ぜひ使っていただきたいんです。

片野 10月から「ミュージックサフラン」という演奏会を開催(写真C)しています!

川上 「醸蔵」でもぜひ演奏してほしいです!

片野 飛んで行きますよ。

市長 音楽は楽しさや感動で人のつながりを生みますね。

片野 そうですね。実は私、ずっと音楽が嫌いだったんです。今もそんなに好きではない(笑)。ただ、好きじゃないからこそ嫌いな人がどうすれば楽しめるかを考えるんです。重要なのはたくさんの人と出会い、刺激を受けること。2019年から長岡が舞台となって開催されている「アフィニス夏の音楽祭」では、世界中から超一流の演奏家が長岡に集結します。音楽の敷居を下げて間口を広げ、もっと大勢の人が一流に触れられるようにしたいです。

井上 私は3年前、まちなかの空きビルを改装して、友人5人とシェアハウスをしていました!(全員 驚き)その近くにある「庭と窓」というギャラリーで、大人が10代の若者に読んでほしい本を寄贈するという企画をしています。本に乗せた想いが世代を超えてつながり、若者の価値観が広がる手助けになればと思ったのがきっかけでした。

市長 若者がつながる、新しい居場所づくりですね。ライフスタイルも世の中の先取りといった形で興味深いです。そして、柴木さんといえばものづくりフェアですね。

柴木 もう18年前ですかね。ものづくりの魅力を次の世代につなげたいと思って始めたんですよ。特にここ2、3年は実際にものづくりに触れてもらう体験(6ページ写真Eをメインにして。家族連れや子どもたちからたくさん来てもらえるようになりました。

市長 私もものづくりフェアにはお酒や音楽、農業など分野を超えてチャレンジする人間が集まる、そんなイベントになってほしいと思ってるんです。ロボット以外にも新しいアイデアを加えたりして。エネルギーが沸いてくるようなフェアにしていきたいですね!

新型ウイルス禍にどう挑むか

市長 感染症の影響で昨年は戦後初めて長岡まつり大花火大会が中止となりました。今年は対策を図りながら何とか開催したい。慰霊・復興・平和への想いをしっかりとつなげていきたいと考えています。【13ページへ】

柴木 今年のものづくりフェアも一時は中止を考えました。ただ、こんな時だからこそみんなにものづくりで元気を届けたい。だからオンラインで開催することに決めたんです。【26ページへ】

川上 そうですよね。お酒を振る舞う私たち酒蔵の場合も、以前のように人が集まるイベントを開催して、さぁどうぞっていうのがなかなか難しくて…。だからオンラインもうまく活用していきたいんです。摂田屋の歴史や今仕込んでいるお酒の話をする。興味を持ってくれた人はすぐに来られなくても、次に行ける時を楽しみに思い続ける時間が生まれる。それって本当にすてきだなって!(全員 賛同)

長部 誰でも簡単に発信できるYouTubeも面白いですよ。4年前くらいから始めて、農業のつらいところもやりがいも、リアルな姿を伝えています。こういう状況で長岡に帰れない人も多いと思うんです。だからこそ故郷の田園風景を全国に届けて、長岡を感じてもらえたらなと思っています。

井上 すごくいいですね。私はあえて、オフラインのプロジェクトに挑戦しました。地域とつながりたい県外出身の学生を募集して、農家さんからお米と手紙を送ってもらうんです。その後つながった学生から地域を訪れてもらい、世代間交流につなげていきます。

市長 どのくらいの応募が?

井上 100人ほどです。(全員 驚き)農家さんも学生からの心のこもった返事にすごく喜んでくれて。新しいことをやるとこんなにも可能性が生まれるんだなって。今後も続けていきたいです。

市長 片野さんはまた違った形で子どもたちに音楽を届けてますね。

片野 はい。これまでは直接学校に行って演奏を指導する出前講座(4ページ写真A)が基本でした。感染症対策などで合唱やリコーダーの演奏が難しい今、ただ鑑賞していなさいっていうのは違うのかなと。子どもの興味を引くよう、教員のみなさんとも協力し、DVD「リリックスペシャル音楽教室」を作りました。笑いの要素やクイズ形式の内容にするなど、飽きさせないよう工夫しましたね。(全員 感心)

市長 世界的に大きな変化が起きています。「変化にこそ、チャンスがある」と思えるかが大事です。みなさんは、まさしくそう思い、行動している。みなさん一人ひとりの取り組みが、米百俵の精神につながっています。


今後の夢、そして長岡のまちへの期待

柴木 ものづくり企業全体のイメージをもっと良くしていきたい。いまだにものづくりの工場ってきつい、汚いというイメージを持たれがちですよね(笑)。だからお酒やお菓子の製造も実際に見せながら、「長岡版の工場見学ツアー」をやりたいんですよ。長岡が誇るものづくりの最新技術を一度見せてあげようって!

市長 挑戦ですね!

井上 昔ながらの空気が残る地方の生活って、それ自体がもう価値ある文化だと思っています。私が長岡に住んだ理由もそこに魅力を感じたから。アップデートも大事ですが、今ある魅力を絶やさないことが肝心。地域には外から来てくれるだけでめちゃくちゃ喜んでくれる人の温かさがあるんですよ。多くの若い人たちに、長岡での生活って生きやすい、愛にあふれるものだよって伝えたいです。

長部 想いにあふれてますね!僕は市長も言っていた「意志ある人」がつながることで新たな価値を生み出せると思います。「世界えだまめ早食い選手権」も農業者以外のメンバーのおかげで、昨年は形を変えながらも活動を継続できました。農業には田畑というフィールドがありますが、他業種の力を借りればもっと魅力を掘り起こせるはず。一人ではなくみんなで、先人が守り続けた大切な長岡の田畑を後世に継承していきたいです!

川上 私は長岡だからこそできる学びを子どもたちにしてあげたいです。スキー授業の感覚で、発酵とかバイオとか、昔から身近にある地域の魅力を最大限に活かして。大人になった時に、長岡が故郷であることを誇りに思ってもらえるように、当たり前に身近にある長岡の魅力を伝えていきたいです。

市長 賛成です。長岡にある地域資源をさらに発信し、次世代に継承していく必要がありますね。

片野 柴木さんのお話にもありましたが、私は記憶に残るような体験を子どもたちに与えていきたいです。勉強だけがすべてではない。いろいろな価値に気付いてもらって、音楽でも何でも、オンリーワンを目指すことが大事だと思います。それはまちづくりも同じこと。他のまちがやっていないことを、世界に向けていち早く発信できる、そんな長岡にしていきたいですね。

市長 今日は、みなさんの夢や長岡への想い、そして人とのつながりこそが大事だという認識を共有できてうれしく思います。長岡はこれまでも、度重なる苦境を、市民の力を結集して乗り越えてきました。とにかく「人、人、人」。地域に暮らす人が大事なんです。今こそ、米百俵の精神に立ち返る時。市民のみなさんが安心して健康に生活できる長岡の明るい未来を、一緒に築いていきましょう!
みなさんありがとうございました。


長岡に息づく、米百俵の精神。

未来への“人づくり”を第一とする
私たちが大切に受け継いできた“心”です。
長岡市では、人材育成と未来への投資を加速させ、
「新しい米百俵」への歩みをさらに進めていきます。


地方の生活、それ自体が文化
“生きやすい”場所を残していきたい
井上有紀さん画像
農村へのインターン画像
井上(いのうえ) 有紀 (ゆき)さん
東京から3年前に移住。学生のU・Iターン支援などを行う「にいがたイナカレッジ」で働く。まちなかのシェアハウスで暮らすなど、最近の若者のライフスタイルを体現


柴木樹さん画像
柴木(しばき)(みき)さん
アルミニウム合金を製造する(株)アルモの代表取締役社長。長岡のものづくり産業をPRする「ものづくりフェア」代表やNAZE副会長として、ものづくり人材の育成や産学連携などに尽力
ものづくりに触れてもらう体験画像
長岡が誇るものづくり技術に
触れる機会を増やしていく


磯田達伸市長画像
磯田(いそだ) 達伸 (たつのぶ)
市長
大きな変化がある今をチャンスに
「人、人、人」で未来へつなぐ


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